vol.4 ゆにここ「旅」
2023年5月7日 – 2023年11月2日
ゆにここは、羊毛フェルトや布、和紙など、柔らかな素材を用いて、立体作品やインスタレーション(空間展示作品)を制作しています。
本展では、純白からきなり色まで、細やかなグラデーションのある同系色の素材でつくられた、どこか生き物のような印象を抱かせる作品が多数組み合わされています。生きているかのように感じられるのは、伸びる触手のような形体、あるいは鱗や毛皮、粘菌のようにも見える紋様、草花や胞子をも思わせるこの独特な造形の効果でしょう。
トラックの片側には、荷台全体を使ったスケールのインスタレーションが展開されています。全体でひとつの作品として提示されていますが、これも幾つもの部分の組み合わせによって構築されています。彫刻的な立体作品から、大小あるカーペット状の作品、帽子やマントのような形体の作品まで、単独でも成立している作品が集積することで成り立っているのです。多数のパーツに分割されていながら、有機的に繋がり合っているように感じられるのは、統一感ある素材と造形性のためと言えます。
これらひとつひとつは、それぞれ違う時期に制作され、作家の手元に保管されていたものだと言います。この展示に際して、作家自身の手によってトラックの空間に適するものが選び出され、設営されました。ゆにここはこれまでにも多数のインスタレーション作品を発表していますが、新しいものを追加制作したり既存のものに手を加えながら、過去の作品を再配置し、都度その展示環境に合わせた新たなインスタレーションを生み出しています。空間が先にあって、ゆにここがその環境に適応するように過去の作品を召喚する、それによって過去の作品群は新しい見せ方で生まれ変わりつづける――この在り方は、与えられた環境に適応する生物の性質(環境適応性)を体現しているかのようです。もしかすると、造形性だけでなく、その現れ方(展示のつくられ方)からして、ゆにここの作品には生命性が吹き込まれるのかもしれません。
生き物のように感じられるからか、ゆにここの作品には撫でたり触れたくなる何かがあります。本展出展作品には、触れることができたり、被ったり身に纏ったりすることができるものが含まれています。手を伸ばし、触れてみることも、ゆにここの作品を真に「鑑賞」する手段のひとつです。
文・上久保直紀
ゆにここ Unicoco
大分県生まれ | |
大分大学大学院 教育学研究科家政教育専修 修了 | |
2008 | 高校教員などを経て作家活動を開始 |
主な個展 | |
2015 | 「ゆにここ展 やわらかいくらし」DIGGINER Gallery(東京) |
2017 | 「ゆにここ展 home」GALLERY ART POINT(東京) |
2018 | 「ゆにここ展 My journey」Art Imajin Gallery(東京) |
主なグループ展 | |
2018 | 「体験型美術展 現代美術のかくれんぼ」 浜田市世界こども美術館(島根) |
2019 | 「IAG ARTISTS SELECTION池袋回遊派美術展2019」東京芸術劇場(東京) |
2020 | 「びじゅつのサマーキャンプ展」浜田市世界こども美術館(島根) |
2022 | 「いとまの方法:杉並学園アートプロジェクト」児童養護施設杉並学園(東京) |
2022 | 「池袋モンパルナス回遊美術館」東京芸術劇場アトリウム(東京) |